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第1部 腕力支配の終焉 12.アメリカ 女性の台頭がアメリカで始まったのは、たんなる偶然ではない。 陽気で気のいいアメリカの男性だから、女性の台頭を招来したわけではない。 もちろ ん、アメリカの男性が特別に女性に優しかった、と言うわけだからでもない。 アメリカという地域ゆえの、一時的な流行でもない。 女性の台頭は、アメリカで起 こるべくして起きたのである。 コンピューターの発達には、いままでとは違う発想が必要だった。 コンピューターを発想し、それを受け入れる土壌が、アメリカの社会にはあった。 宇宙開発のためには、今までの機械では対応できなかった。 地球をでる。 このときになって、今までの発想が足枷とさえなってきた。 新しい機械の登場は、アメリカで始まった。 この事実が、女性の台頭をアメリカで起きさせた、最大の理由なのであった。 アメリカの男性も、一生懸命に働いてきた。 妻や子供を養うため、職場で働き、戦場にも行かされた。 戦争をするような為政者を選んだのは、半分は女性であるにも関わらず、男性だけが戦場に出かけた。 女性は弱者であるという理由で、兵隊になるのを免れた。 男性は浮気をしたのでもない。 生活費を家庭に入れなかったのでもない。 男性は何も悪いことなどしなかった。 にもかかわらず、家庭で家事労働に勤しんでいた女性は、突然に、エプロンをはずしてしまった。 女性はその時から、生活に困るかも知れない危険を犯してまで、男性と同等な存在であることを確認した。 もちろん、女性の給料は男性に比べて低い。 女性の労働条件は、まだまだ悪い。 しかし、男性に頼らなくても、女性は生きていける時代にアメリカでは入っていたのだ。 時代の価値は、男性から両性のうえに移っていた。 アメリカの女性の行動は、それを確認したにすぎなかった。 アメリカの女性たちは、専業主婦になることなど想像もしなくなってしまった。 彼女たちは、自分自身の人生を生きることに、自分の全興味を集中している。 アメリカの女性にとって、終生にわたって職業を持つことは、当たり前以外の何物でもない。 アメリカの女性たちは、世界中の男性たちがそうであったように、よりよい自分の人生を自分で生きることに貪欲になった。 時代は、女性に味方した。 女性は、自己の意志とは無関係に、妊娠してしまう恐れをもち、しかも、自己の意志だけでは妊娠できなかった。 産む性は、 悲劇的な立場にあった。 そこに、ピル<経口避妊薬>の登場である。 女性のみの意志で、100パーセント確実に、しかも男性に気付かれずに、避妊が可能に なった最初のもの、それがピルである。 ピルによって、少なくとも前者は解消された。 産む性としての女性の手になかった、妊娠・出産が半分だけれど、女性の手に入ったのである。 このことは、女性の台頭にとって、大きな跳躍台となった。 いままで妊娠がどんなに、女性の行動を制限してきたことか。 危険な堕胎によって、女性は命さえ落としたのだ。 もはや、望まぬ妊娠が、女性の人生計画 を狂わすことはなくなった。 女性だけが、種の保存に多大の労力を奪われることに、女性は拒絶する。 女性は借り腹ではない。 しかし、男性にとって子が必要であると同様に、女性にも子は必要なのだ。 生命科学の進歩は、人工授精、精子銀行、試験管ベイビーなど、女性の意志と肉体だけで出産できる状況を間近に予 見していた。 その時代はきてしまっているのだ。 人工授精が医学的に可能になったときに、そして、精子銀行が出来たときに、女性は妊娠出産の自由を、完全に手にいれたのである。 今や、経済力のある女性にとって、精子を購入すれば、自分だけで子がもてるのである。 繁殖に、卵子が不可欠であっても、精子は必ずしも必要としない、ある種の動物の例は、なにやら暗示的である。 妊娠と出産の自由は、今や完全に女性のものである。 女性の意志と身体の同意なくしては、妊娠も出産 もありえない。 アメリカの例は、それを示している。 |
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