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第1部 腕力支配の終焉 10.自己保身 女性は子を産むという、男性にはない属性を持っている。 にもかかわらず、女性はなぜ二流の人間としてしか、扱われなかったのだろう。 男性と女性の間のにあるのは、腕力の違いだけだったにもかかわらず何故、女性は二流だったのだろう。 ここで私たちは、人間が生物であるという、不可避の事実にぶつかる。 どんな生物も、個体=生きているものは生きようとする、という大前提がある。 これが、個体維持である。 もうひとつの本能、種族保存とは、次の世代をつくることである。 ところで、二つの本能は、同じ順位なのだろうか。 二つの本能は、同列ではない。 種族保存は個体維持の上にのみ、成り立っていたのだ。 己の体が維持できなければ、次の世代のことなど、かまっていられない。 この事実が、腕力に優れる男性を、より優位の人間として、位置づけていたのである。 生物である人間は、自分の体を維持するための食料が入手できてはじめて、次の世代のことを考える。 当人の体を維持するための食料すら、入手できないところでは、当人が生きて行けない。 だから、子孫を残しようがない。 これは、男性にも女性にも、同じように当てはまる。 自己を維持するに足るだけの食料がなくなってくると、人間は自らの生命を保つため、無意識のうちに切り詰められるところは、可能な限り切り詰めてくる。 まず、痩せてくる。 非活動的になる。 そして、極限に近くなってくると、男性は勃起せず、女性は生理が止まる。 人間は誰でも、自分の生命を維持することが、最優先するのである。 男性は誰でも、女性を見れば欲情するというのは、一面の真理であり、全面の真理ではない。 男性も女性もともに、飢餓状態にあるときは、性欲よりも食欲が優先するのである。 個体維持が種族維持に優先するので、女性が子を生むという、女性にしかできない能力を持っていても、やはり女性は男性に勝ることはなかった。 それは、人間の生きることが厳しかった、長い長い時代をへてきた名残であっ た。 豊かな時代がこれから何万年も続き、人間の体が変形して、飢え=空腹感をまったく忘れたら、その時はじめて、性欲が食欲に先んずる時代になるかも知れな い。 それまでは、子を生ませ・産む能力より、自己を維持する能力が先行するのである。 これは、動物としての人間が不可避的に持っている自己保身の力で あって、これがないと人間という種は、これまですでに、滅亡していたかも知れないのである。 子が産まれるかどうかは、男性と女性が生きていく上で、単に結果にしか過ぎない。 結果でもって、生きている人間を計ることはできない。 今日ま で、女性は劣等な労働力だったので、出産能力にこだわっていただけである。 これからは、女性も個体維持にどれだけ貢献するかで、その存在意義をはかられる。 |
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