考える家  : 気配の住宅論

目 次

 1.敷 地  2. 玄 関  3.光と闇  4. 柱と壁  5.建 具
 6.天 井  7.ト イ レ  8.浴 室  9. 厨 房 10 畳と床
11.居 間 12.個 室 13.設 備 14.外 観 15.あとがき

8.浴 室    その2

 見晴らしの良い風呂というのがあります。
こちらから見えるというのは、外からも見えると言うことですから、注意が必要です。
外からのぞかれないような場所、つまり2階の隅などに設けた風呂は、まるで温泉に行ったような気分にさせてくれます。

 洗い場から外を見るのではなく、やはり浴槽に浸かったまま外を見たいものです。
前例と同様に、ここでも浴槽は大きなものが欲しいところです。
ただ、風呂場の窓は湯気で曇りやすく、なかなか気持ちよく外を眺めるようにはなりません。
確実に外を見たければ、サッシにはペアー・ガラスを入れることを薦めます。

 浴槽の長さは、1メートルから1.6メートルくらいが通常でまわっていますが、1.4メートルを超える物なら、かなりゆったりとしています。
長さが長くなるに従って、深さが浅くなる傾向があります。
和式といわれるものは一般に深く、洋式といわれるものは浅いのはおわかりでしょう。

 日本の古いものを大事にしたがる匠研究室ですが、こと風呂に関しては洋式のほうがくつろげるようです。
日本人の風呂好きは有名ですが、それはどうも風呂に付随した入浴以外のことが好きなように思います。
お湯に浸かることそのもののためには、日本の風呂は深すぎるし、何よりお湯の温度が熱すぎます。
お湯に浸かって本を読むなど、長時間の入浴には、温いお湯で横になったほうが圧倒的に楽です。

 と、ここまで書いてきて、浴室の設計こそライフ・スタイルならぬあなたの入浴スタイルが、確立されている必要があると感じています。
家に何を求めるか、それはあなたのライフ・スタイルによると結論つけました。
誰でも入浴するものでありながら、風呂に出される希望には非常に個人差があります。
風呂とは入浴の場でありながら、人は浴室で入浴以外のことをしています。
瞑想、風景を眺める、読書、垢擦り、テレビを見る…などなど、意外と思えるほど、多様なことが浴室で行われています。

 あなたは風呂で何をしたいのでしょう。
それは匠研究室が、あなたの浴室を設計するときにお聞きすることにして、一般的な浴室設計に戻ります。

 浴槽の材質ですが、これはアクリル樹脂が良いでしょう。
今まではステンレスがもっとも掃除が簡単でお奨めでしたが、どうも金属特有の色が冷たいと嫌われていました。
お湯が入っているのですから、決して冷たくはないのですが、冷たい感じを与えるのでしょう。

 最近出てきたアクリル樹脂の浴槽は、肌触りも良いし保温性も良いと、なかなかにお奨めです。
一時は檜の浴槽に人気がありましたが、木製の浴槽は背もたれの部分を斜めに作ることが出来ず、どうしても座った姿での入浴になります。
これは長時間の入浴には、ちょっと辛いのではないでしょうか。

 風呂場の床は、タイルでしょう。
石も良いものですが、掃除のことを考えると、タイルに軍配が上がります。
壁になると、さまざまな素材が使用可能になってきます。
防かび処理を施せば、木材でも良いでしょうし、左官塗りでも良いでしょう。
左官塗りなら天井をドームのようにもできます。
天井は斜めにしておいたほうが、滴が垂れません。
シャワーをつけるのは、もう常識ですね。

 浴室に必ずつけたい物に、浴室換気扇があります。
これは本来ユニットバスを乾燥室にするのが目的ですが、浴室を暖めるのにとても有効です。
冬の寒い日、冷えた体で1番風呂にはいるのは、健康にも良くありません。
風呂はトイレと並んで、倒れることの多い場所ですから、浴室を暖かくしておくことは良いことです。
これはタイマーと連動できますから、入る前にスイッチを入れておけば、風呂場で寒い思いをしなくてもすみます。

 風呂へはいるには、誰でも裸にならなければいけません。
浴室で裸になるより、その前の洗面所あたりで脱衣する例が多いようです。
着ているものを気持ちよく脱ぐ雰囲気とはどんなものか。
これにはなかなか正しい答えをだせません。
辛うじて、洗面所を寒くしておかない、と言ったことが思い当たる程度です。

 もちろん、下着やタオルの物入れは用意するでしょう。
ひょっとすると洗濯機をおきますか。
この洗面所は、化粧室を兼ねることが多く、照明を明るくしておいたほうが良いかも知れません。
匠研究室の標準仕様は、鏡の両側に白熱電球を4ヶずつ並べるというもので、スタジオや楽屋の化粧室と同じように作っています。

 浴室はお湯に入るという機能が優先するところですから、なかなか独創的な風呂は作れません。
ここで言える確認事項は、浅い浴槽、斜めの天井、2重窓(ペアー・ガラスでも良い)、やや暗めの照明(本を読むなら手元のみ明るく)、浴室乾燥機をつけると言ったことでしょうか。
体験的に言えるのは、入浴のスタイルは意外に各人各様です。
ですから、風呂場はもっともっと独創的なってもいい場所ではあります。  


「タクミ ホームズ」も参照下さい

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