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6.男性は性的快感を観念でおぎなう 男性の快感が、肉体で体感することに限界があるとすれば、肉体に代わるもので快感を補わなければ、性交への志向性が低くなる。 肉体的な行為の典型と見なされる性交において、男性は快感の追求を肉体として行うことができない。 そこで肉体に代わって、精神作用に頼らざるを得ない。 どうしたら快感を高めることが可能か、と考えることは肉体の働きではなく、精神の作用である。 いっそうの快感の追求において、男性はどうしても観念にすがらざるを得ない。 女性の性的快感に奉仕することによって、より強い自己存在を確認するのも、精神的な快感だろう。 また自己の快感追求としても、淫らな想像が性的な興奮を呼ぶこともあり得る。 性的な快感は、本来、肉体が感得するものである。 女性は肉体で感得しており、より一層の快感の追求は、時間的に長く体感するか、肉体的により刺激的であろうとする。 快感の極みが高まってくると、女性は忘我の境地に入って、むしろ精神作用から離れて、肉体に没入していく。 男性は反対に、快感を追求するために、肉体から離れざるを得ない。 痛いと感じたときには、無意識のうちに手を引っ込める。 同じように、肉体的な感覚も肉体が感得するものである。 だから、性的な世界においても、性的な感覚を感得するために、肉体に集中するのは当然である。 肉体として快感を追求する女性の性感は、きわめて自然な構造のうえに成立している。 しかし、男性の性感追求は、自然な構造の上に成立していない。 男性の性的快感は持続しない。 男性は悲しいかな、肉体が肉体を裏切る。 だから男性が、女性との関係性を維持しようとすれば、女性の快感に奉仕することをもって、自己の歓びとする間接的な仕儀になる。 男性は肉体的な快感を精神作用で補って、やっと自己の性的な快感としている。 男性が自己の快感を追求した場合、一体どうなるだろうか。 男性の肉体構造が、持続的な快感追求を許さない。 だから、男性が肉体それ自体で、性的な快感を追求することは不可能だろう。 にもかかわらず、より大きく強い快感を追求すると、肉体の領域を逸脱する。 男性にとって快感の追求は、肉体の行う行為ではない。 肉体的な快感の追求を、観念として追求するという逆転したことになる。 観念で肉体の快感を追求することが、女性とは違う男性の決定的な資質であろう。 観念で肉体の快感を追求することを、肉体と観念の狭間と呼べば、貧弱な男性の快感享受能力が、肉体と観念の狭間を生みだした。 つまり、肉体がなすべきことを、精神作用という観念が代替している。 これが男性の習性になったと言ってもいい。 肉体という現実は、しっかりとした手応えを持っている。 肉体は可視であり、具体的であり、堅実である。 反対に、肉体による行為には限界がある。 肉体が疲労してしまえば、それ以上の行為はできない。 故障することはあっても、肉体は逸脱しない。 それは男女ともに同じである。 精神活動は手応えがなく、とらえどころがない。 また想像の世界に、さまようがゆえに限界がない。 精神活動は不可視で、具体性をもたない。 性の快感という妄想にとりつかれた男性は、無限界の快感を追求しようとする。 その結果がどんなものかは、論じるまでもないであろう。 男性がどんなに激しく腰を前後させても、男性には女性が感じているような快感はない。 悲しいかな男性はよがれない。 しかし、女性は自己の性交運動が、素直に快感に結びついている。 激しく腰を使う女性に、快感がこみ上げてきているのが、動画ポルノでは良くわかる。 性的な快感を味到する女性を尻目に、男性はもくもくと性交運動を続ける。 射精の瞬間まで、男性は黙って運動を続ける。 動画ポルノは、快感にうちふるえる女性とは対照的に、性的な快感の薄い男性の姿を、明らかにしてしまった。 ポルノ反対にしても賛成にしても、性交の実体がポルノに反映されていると前提していた。 しかし、静止画ポルノでは、当事者たちの運動が、相互にどんな影響を与えるか表現されていなかった。 静止画ポルノでは、性交の実体を反映していなかった。 静止画ポルノは、性交の一瞬間を切り取ったものである。 だから、ポルノを見る者からの勝手な意味付与を許してしまった。 一枚のポルノから女性差別を読みとって、否定的に論じる者もいれば、健康な性欲の表現であると肯定する者もいた。 賛成反対と、両極端の意見が、静止画ポルノでは成り立ち得た。 それにたいして、動画ポルノでは両者の関係が不可避的に表現されるので、見る者が意味付与する余地はずっと少ない。 動画ポルノは男女の関係を、より明確にしたと思う。 |
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