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JICPAジャーナル(編集:日本公認会計士協会)第一法規出版に連載したものです。 |
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第7回 デジタルの恩恵 今や、職場や家庭にコンピューターが入り込み、デジタルな世界は随分と身近になりました。ところで、デジタルな世界の広がりは、我々の生活に何をもたらしたのでしょうか。 そして、コンピューターはどのようにして、現実を解くのかを検討してみましょう。 わかったこと 空を飛べないはずの人間が空を飛んだり、遠い場所の様子をテレビが知らせてくれたり、私たちは近代文明の恩恵に浴しています。 ではこれらは、コンピューターがなければ、実現が不可能なのでしょうか。 一部はそうだとも言えます。 たとえば、1885年にはダイムラーとベンツによって自動車が生まれていますし、1903年にはライト兄弟によって飛行機が飛んでいます。 また宇宙ロケットの原型は、第2時大戦中にドイツがイギリスへ飛ばしたVミサイルでしょう。 そして、1929年にはイギリスで、テレビの実験放送が始まっています。 ライト兄弟の飛行機とジャンボ・ジェットの間には、本質的な違いがあるのでしょうか。 空気の流れが生みだす揚力が、翼を引き揚げて空を飛ぶということに限っては、本質的な違いはないでしょう。 空を飛ぶ原理がわかってしまえば、あとはその精緻化が待っているだけです。 精緻化によって、その原理が安価に実現できるようになり、多くの人がその恩恵にあずかれるようになりました。 アルバート・アインシュタインが一般相対性理論を発見したのは、1915〜16年にかけてです。 デジタルが近代を開いたと前述しましたが、近代的な発明の多くはコンピューターの登場以前に生まれています。 つまり、自然の秩序の大枠は、コンピューターの登場以前にほぼ知られていたと言えます。 ではコンピューターの果たした役割は何かと言えば、それはより精緻に、より細かく、より早くといった、量的な意味における一層の高度化でした。 ジャ ンボ機を安全に飛行させるには、コンピューターが必要ですし、数分間隔で離発着する飛行機を管制するにも、コンピューターは不可欠です。 無限量から質へ コンピューターがなかった頃、自然の仕組みを探求することは、頭のなかで想像することでした。 想像しては現実に似せた模型をつくり、それをもとに想像します。 そして、また想像し、模型をつくって実験することを、繰り返してきました。 観察と実験にもとづいた想像のなかから、近代の科学は生まれた、と言っても過言ではありません。 そして、頭のなかでの想像のなかから、近代の科学は自然の規則性を、たくさん発見してきました。 しかし、たくさんの条件を複雑に仮定して考えることは、 大変に難しいことです。 たとえば、大きな力がかかると、建築物が壊れることは誰でも知っていますが、どんな力がどうかかると壊れるかは判りません。 地盤の状態や建物の構造など、多くの条件を設定しなければ、精確な結論はだせません。 模型を壊して実験をしてもいいのですが、違った条件で何度も実験するには、無数に模型を作る必要があります。 それには膨大な時間と労力がかかり、現実的な話ではありません。 そこでコンピューターです。 仮想の建築をコンピューターのなかに想定し、仮定する条件をさまざまに設定します。 模型の製作には限界がありますが、コンピューターでは何度でも、いかようにでも条件を設定できます。 条件を変えて何度も何度も仮想の実験を繰り返すことによって、規則性の理論 は現実にすこしづつ肉薄していきます。 条件を変えての繰り返しによる仮想の実験、これがコンピューターの大きな役割です。 コンピューターの処理能力が高くなれば、条件もいっそう複雑に設定できます。 より細かく条件が設定できれば、そこから生まれる規則性への信頼は、より高くなります。 デジタルな世界での仮想現実の実験が、現実世界の規則性を教えてくれ、コンピューターのする膨大な量の繰り返しが、規則性への信頼性を飛躍的に向上させます。 人間の頭が想像した自然の規則性を、デジタルな仮想世界において、無限回にわたって実験し確認することによって、その 正当性を確かなものとする。 想像によって生まれた理論の検証にあって、無限量の質への転換、これがコンピュータの恩恵ではないでしょうか。 |
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第8回 肉体と頭脳へ進む