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JICPAジャーナル(編集:日本公認会計士協会)第一法規出版に連載したものです。 |
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第1回 焼き物の世界 身近な生活のなかから、アナログなるものとデジタルなるものを見つけだし、 これから12回にわたって両者の融合を考えてみましょう。 アナログとは?デジタルとは?アナログと言われても、それが何だかすぐには思いつきませんが、デジタルならたやすく想像がつきます。 腕時計の小さな窓の中に見える数字、あれがデジタルでしょう。 今やどこにでもころがっているデジタルの腕時計ですが、針のない時計が登場したときは、ちょっとした驚きでした。 そして気がついてみると、長針と短針を持った昔からの時計を、いつの間にかアナログ時計と呼ぶようになっています。 アラビア数字を意味するdigitに、alがついてデジタルとなったわけです。 大胆に言えば、デジタル的思考とは数値的思考とも言えるでしょう。 デジタルとい う言葉を聞くと、何となくコンピューターを連想するかも知れませんが、ビンゴです。 コンピューターの内部では、0と1の2つの数字だけが使われているので、デジタルと言えばコンピューターのことだ、と思われても間違いではないでしょう。 デジタル的思考は、コンピューターが生まれる前には、なかったのでしょうか? そんなことはありません。 土をこねて作る焼き物を想像して下さい。 焼き物は人類が発明した最も古いものの一つで、古代遺跡から土器として発掘されるように、きわめて長い耐久性を 持っています。 もちろん今日でも焼き物は作られています。 その製作過程は、人間が手で土をこね、形を作り、窯に入れて焼き上げる。 そして、火の加減を、炎の色で見る。 太古から繰り返されてきた焼き物作りです。 今日では、セラミックという焼き物が登場してきました。 セラミックが手でこねて、炎の色で焼き加減を調整しながら作られているとは、誰も考えないでしょう。 機械で作り、機械で管理した窯で、焼いているに違いありません。 どうやって? そこでデジタルです。 焼き物を作るには、人間の長い経験によって養われたカンやセンスが、大きくモノをいうものですが、セラミックを作るには正確な温度や湿度また時間の管理、と いった数字で表される情報におっています。 ここでは体験から生まれたカンが、数字による制御にとって代わられました。 連続か 不連続か 体験から生まれたカンは、一口で説明するのは何とも難しいモノです。 たくさんの言葉を並べても、カンが何だかを説明するのは難しいでしょう。 カンの急所とも言うべきカンどころを知るには、実際にやってみるより他に道はありません。 その理由は、カンという知識は連続しているからです。 どこからどこまでがひとつのカン=知識だか判りません。 焼き物を作るのも、作家や職人の長い人生体験が、その背景にあります。 彼等の体験のどの部分が、焼き物の製作に用いられたのか、余人には知りようがありません。 土の状態、成分、温度、湿度、時間などなど、他にも膨大な情報があるでしょう。 こうした情報をすべて数字で表しておけば、他の人でも以前の人と同じ状態を、再現できるのではないでしょうか。 そうも言えます。 しかし、どんな情報をどう数値化するかは、とても難しい問題です。 かつては、すべての情報化は不可能でし た。 そのうえ数字になった情報は、盗まれることもありますから、情報の数値化は必ずしも歓迎されたわけではありません。 コンピューターが登場するまでは、数字による情報は精度があらくて、とても人間のカンにはかないませんでした。 コンピューターが賢くなるにつれて、数字での制御が人間のカンに匹敵するようになってきました。 そして、いまや人間のカンよりもコンピューターのほうが、正確な仕事をする分野さえ登場してきました。 たとえば宇宙開発やインターネット、これらはコンピューターなしでは不可能です。 最後になりましたが、アナログとは何でしょう? アナログとは、analogueつまり類推することです。 アナログ的カンが連続(=リニア)しているとすれば、数値化された情報は不連続(=ノン・リニア)です。 不連続であっても、その精度を上げることによって、デジタルが人間のカンの代打になり得る。 そんな時代が、デジタルの時代です。 |
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第2回 デジタルの歴史へ進む