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本論でいうウーマンズ・リブは、今でいえばフェミニズムなのだが、当時のことを考えてウーマンズ・リブという言葉は変えなかった。 ウーマンズ・リブがフェミニズムに転じてきた事情は、「近代の終焉と母殺し」を参照して欲しい。 ところで、本論はさんざんな評価だった。 女性を養わない気か、とかセックスだけして結婚しないのは無責任だとか、ボロボロにたたかれた。 批判したのは男性だけではない。 女性も批判の急先鋒となったのは、いまでは懐かしい思い出である。 その後の男女をみると、晩婚化・非婚化がすすみ、少子化が取りざたされるようになったのは、周知のとおりである。 女性たちが職場進出しはじめて、男性と同等に働くようになった。 これも本論が述べた経過である。 我が国の女性運動には、思想的に根本的な欠陥があり、それがウーマンズ・リブ=フェミニズムの普及を阻んできた。 なかでも大学フェミニズムは、働く女性の応援をしなかったし、結果として専業主婦を温存してしまった。 本論を書いてから10年後の1992年に、新泉社から「性差を越えて」を上梓したが、本論がその核になっていたことはいうまでもない。 本論が1982年に書かれたことは、女性解放にとって誇っても良いと思う。 −追記− その後、情報社会の進展をみると、本論の正しさが深まってきたように感じる。 詳しくは「核家族から単家族へ」を読んで欲しいが、以下に本論後をかんたんに記す。 血縁を重視するのは、大家族だと思いがちだが、じつは違う。 血縁を大事にした家族は、言うところの核家族だった。 大家族は家が生産組織であり、生産組織からはじき出されてしまうことは、明日からの生活が立ちいかないことだった。 だから誰でもが、家に属さないと生きていけなかった。 そのため、血縁という事実よりも、家を存続させることが大切だった。 そのうえ、産業は農業が主だったので、家は村落共同体の支配に従わなければ、存続することはできない。 大家族では、血縁の子供が生まれなければ、養子をむかえたし、血縁の子供のできが悪ければ、やはり養子をとった。 反対に血縁の子供が多すぎれば、ほかの家に里子にだすことになった。 いずれも家の生産性が、人間の生き方を決めたから、血縁であるかよりも、具体としての子供を重視した。 つまり大家族では、擬制の血縁など登場する余地はなかったのだ。 核家族になると、家は生産組織ではなくなった。 なぜ、生産組織ではない家に、人々が一緒に暮らしたかといえば、稼ぎのある人間は成人の男性だけだったからだ。 都市にうまれた核家族には、女性も働く場だった田や畑はない。 そのうえ、女性を受けいれる職場はなかった。 大家族の時代には、男女はともに田や畑で働く同僚だった。 そのため、男女間には労働が与える連帯感があった。 しかし核家族では、男性は会社での労働、女性は家事労働と、男女の役割がまったく違ってしまった。 もはや男女は、同質の労働に従事する同僚ではない。 養う男性に養われる女性、この男女を結びつけ続けたのは、セックスだけになった。 大家族では、家が村落共同体に属したので、村落共同体の掟が家族を拘束した。 村落共同体の労働力は、最低限のものが必要である。 村の耕作面積は決まっているので、そこを耕す人間の頭数も、一定の人数が必要だった。 そこで労働力としての頭数を、確保する必要があった。 赤松啓介の「非常民の民俗文化」によれば、労働力を確保するために、産む者つまり女性のセックスは、夫の独占ではなかったという。 そうした目で見ると、夜這いなどの風習も違って見えてくる。 しかし、核家族では男性が養う見返りに、女性のセックスを独占した。 妻のセックスを独占することからは、産まれる子供が夫の子供であることが、無前提の前提となった。 核家族にあっては、子供は必ず父親と血縁がつながっているはずだった。 女性には血縁幻想がうまれる余地はない。 血縁幻想が必要なのは、子供の出自を確信できない男性にとってである。 核家族になって、男性によるセックスの独占と、子供の血縁が対になって、家族の支配価値となった。 男性には子供の血縁を確信できない。 ここで血縁幻想がうまれてくることになった。 情報社会になって、女性に経済力がついてくると、自立した女性は、結婚しなくても生きていける。 その男性がイヤになったら離婚すればいい。 自立した女性は、自分の好きな男性とセックスできる。 情報社会では女性のセックスは、1人の男性が独占できなくなった。 セックスと男女関係が切り離されたのだから、セックスの結果もまた違った意味になった。 ここで血縁が意味を失ったのである。 もはや血縁にこだわる必要はない。たとえ血縁関係はなくても、自分が愛情を注ぐ対象こそ愛おしい。 当然のこととして、血縁幻想も雲散霧消した。 アメリカなど先進国で、養子が増えているのは自然の流れである。(2007.07.22) | |||
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