家を建てようとする方へ:発注する前に  第1部

目    次
  第1部
はじめに 1.建築界の仕組み 2.一軒の家 3.時代が変わった
  第2部
4.設計の限界 5.家は商品か 6.設計を支えるもの

3.時代が変わった   その1

 今までの話で、住宅建築のすべてだと言っても良いくらいです。
しかし、ここまで読む前と今では、何も変わっていないことに気づきます。
それは、建築主つまりあなたの話が抜けていました。

 家作りには設計という作業と、施工という作業があります。
今までの話はどちらかというと、施工の話でした。
施工つまり現場で職人衆がやる建築仕事です。
あなたは日曜大工が得意でも、自分で家を施工するというのはなかなか困難でしょう。
あなたには本業があるでしょうし、前述のとおり家作りは大工仕事ばかりではありません。
また、組織としての職人集団がチームワークよろしく、一軒の家をまとめあげていくものですから、建築主という立場の違うあなたの参加は、必ずしも良い結果ばかりをもたらすとは限らないでしょう。

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 すべて自分で作るんだというなら、話は別です。
「建築への招待」に戻って、「ハードとしての確実な家作り:実践編」を見て下さい。
そういうあなたには、この話とはまったく別に、匠研究室が相手になることにやぶさかではありません。
喜んで協力します。

 施工は本職にまかせると決めた方は、これから先に読み進んで下さい。
建築主たるあなたが、自分の家を作るのですから、自分の希望や好みを反映させたいと考えるのは当然です。
一見すると複雑に見える建築界のしきたりや、とっつきにくい職人たちを相手に、自分の希望を通すのはちょっと気が重いでしょう。

 職人たちの機嫌をそこねると、手抜き工事をやられてしまうのではないか、という心配もあるでしょう。
あなたの馴染みうすの建築業界を相手の仕事は、確かに不安が多いことでしょう。
しかし、建築界とても普通の人間が働いている世界です。
これから、あなたの希望や好みがなぜ実現されにくく感じるのか、またそれを実現させるにはどうしたらよいのかを、考えていこうと思います。

 建て売り住宅を振り返ってみると、妙なことに気づきます。
建て売り住宅は、住み手がまだ決まらないうちから建ててしまいます。
住み手の好みによって家の仕様が決まるとすれば、本当はどのような家を建てたら良いか判らないはずです。
建て売り住宅では住み手の希望や好みに従おうにも、まだ住み手がいないのですから従いようがありません。

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 では何を目安に外観やら内装やら間取りなどを決めているのでしょう。
ちょっと考えると、妙なことだとは思いませんか。
それを作っている設計者や職人たちは、自分の住む家ではありませんから、自分の好みで作っているのではありません。
にもかかわらず、建て売り住宅はどんどんと作られています。

 それは割と簡単な理由によります。
建て売り住宅は、まず何よりも売りやすいことです。
一度に10棟売り出して、1棟でも売れ残ったら大変です。
建て売り住宅は高額商品ですから、建築の実費支払いだけでも大変、儲けどころではなくなってしまいます。
ですから、最大公約数的な家、つまり誰にでも気にいってもらえそうな家を作ることになります。
そう思って建築される家が、街並みを作っています。

 本当は誰も心から気に入っているわけではないけれど、建て売り住宅だからこんなものさ、と買われます。
半ばあきらめ顔で住んでいる建て売り住宅が、誰にでも気に入ってもらえるように作られているのは、何という皮肉でしょう。
熱狂的に迎えられる車のデザインがありながら、そうした住宅のデザインがないのは不思議です。

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 そうは言っても、建て売り住宅は完成品を買うのですから、買い手にとってコトは簡単です。
気に入らなければ、買わなければいいだけです。
ところが、注文住宅となるとそうはいきません。
工務店なり大工なりの実績(=過去にやった仕事)を見ることは出来ますが、それはあくまで他の人の家であって、これから作るあなたの家ではありません。
どう説明されても、何枚設計図書を見せられても、あなたには手応えがないことでしょう。

 かつては、建築主(=住み手)と施工者がいちいち相談して、仕事を始めました。
その頃は、建築主の生活の仕方が誰にもよく判っていました。
大金持ちは、女中を何人も使うといった大金持ち風の生活をしていましたし、会社員は会社員風、商人は商人風に、また職人は職人風に生活していました。
ですからその頃は、建築主の希望も、いくつかの典型例に分類しやすかったのです。
そしてその典型例は、職人たちにとっても馴染みのあるものばかりでした。
必然的に、家作りはそれ風のものを造れば良かったのですから、話は簡単でした。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい