家を建てようとする方へ:発注する前に  第1部

目    次
  第1部
はじめに 1.建築界の仕組み 2.一軒の家 3.時代が変わった
  第2部
4.設計の限界 5.家は商品か 6.設計を支えるもの

1.建築界の仕組み   その1

 現在、1年間に約100万棟の新しい家が作られています。
それがどのような内訳かと言いますと、下の表のような案配です。
これはすべての住宅を一戸として計算しています。
ですから、100戸が入居しているマンションは100戸分として計算してあります。
このうち本論で取り上げるのは、一戸建ての独立住宅です。
つまり、今、あなたが建てようとしているのは、一戸建て独立住宅なのですから。
しかし、そこに行く前に、他の家も見ておきましょう。

    建て売り住宅       プレファブ住宅        注文住宅      アパートなど集合住宅  
18% 11% 50% 21%

 まず、建て売り住宅と呼ばれる土地付きの一戸建て住宅です。
建て売り住宅とは、まだ住む人が誰だか判らないうちから、ある誰かが(不動産業者の場合もあり、建築業者の場合もある)ここに家を建てれば、売れて儲かるだろうという企画を立てるわけです。

 その企画に従って、売れそうな家をつくり、ほぼ完成した頃合いを見計らって売り出します。
この建て売り住宅の場合、買い主は家だけを買うのではなく土地も一緒に買います。
家はやがて朽ち果ててしまうかも知れないけど、土地は不滅のものだと自らをなぐさめて、敷地いっぱいに建てられた建て売り住宅を買います。

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 その大部分が木造で、小さな敷地に同じような形の家が、ギッシリと建ちならんでいる風景はおなじみだろうと思います。
新しい建て売り住宅地には、まだ売れ残った家のための赤いのぼり旗が、にぎにぎしくたててあるかも知れません。
建築される一戸住宅のうち、少なからぬ部分が、別名を分譲住宅とも呼ばれるこの建て売り住宅です。

 建て売り住宅であっても大工などの建築労働者=職人は、注文住宅と同じように必要です。
以前の好景気には、職人たちは断りきれないくらいの仕事があって、嬉しい悲鳴を上げていたものでした。
しかし、この建て売り住宅は建てる人(建築主)と住む人が違うために、仕事が雑になりやすい傾向がありました。

 これは直接の作り手である大工たち職人には仕事上の責任がなく、アフター・ケアの心配がないという理由からでもありました。
これによって、職人の質がずいぶんと落ちてしまいました。
一度落ちた仕事の水準はなかなか戻らず、建て売り住宅の功罪はさまざまでした。
しかし少なくとも今、新しく家を建てようとしているあなたにとっては、良いことばかりではなかったようです。

 かつて建て売り住宅をたくさん手がけた職人に、あなたの家作りをまかせてはいけません。
建て売り住宅の責任は売り主(不動産業者や建築業者など)にあって、現場で仕事をした職人にはありません。
ですから、仕事にかかわった職人たちは、アフター・ケアを考えた仕事をしていません。

 建て売り住宅は売り主が職人に一棟全部でいくら、という手間方式で仕事をさせたので、早く仕上げて短期間に何棟もこなすという風潮を生み出しました。
早く仕上げれば仕上げるほど、良い収入になる仕組みです。
早い仕事は手間をおしんだ安易な仕事になり、入念な仕事はどんどんと追いやられました。
一度安易な仕事が身についた職人は、かつてやっていた入念な仕事がもはや出来なくなってしまいました。

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 職人たちは仕事が好きであったはずです。
けれども、世の中が万事お金だとなったとき、職人たちもそれに追随したことを責めるわけにはいきません。
職人の心がすさんでしまいました。
仕事の腕よりもまえに、丁寧な仕事についやす細かい心配りや根気が失われてしまいました。
ですから、建て売り住宅の大工は早い仕事向きです。
たとえ1ヶ月早く完成しても、あなたはその家に何十年と住むはずです。
建て売り大工は敬して遠ざけるべきです。

 建て売り住宅が完成した現物を見てから買うのに対して、それ以外のものは全て見本を見て注文します。
その程度が現物見本(住宅展示場など)か実績見本(以前の仕事)の違いはあります。

 プレファブ住宅と呼ばれる工場生産住宅は、現物見本が用意されており、ちょうど自動車を買うときのようです。
見本を見て、色は何色にするといった具合に、少し仕様を変えて商品を買うのと同じです。
最近では、プレファブ住宅の性能も非常に上がっており、以前のようにちゃちな物ではなくなりました。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい