家を建てようとする方へ:発注する前に  第1部

目    次
  第1部
はじめに 1.建築界の仕組み 2.一軒の家 3.時代が変わった
  第2部
4.設計の限界 5.家は商品か 6.設計を支えるもの

2.一軒の家    その2

 元請けの生活は建築主たるあなたによって支えられています。
元請けの工務店は他のサイドビジネスによって、生計を立てているのではありません。
住宅一軒の請負金額が高額のため、細かい項目まで目が届かず、ついあれもこれも無料サービスだと期待しがちです。

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 請負金額は各職方に支払う項目を、すべて合計したものとして算出されています。
いまやゴミ捨てさえも有料で、二トン車一台につき2万円くらい払わなければ、捨てることは出来ません。
こうした項目をすべて計上するのは、なかなかやっかいなので、見積書には明示されていないことが多いとは思います。

 しかし、こうした費用を無料サービスせよと要求することは、元請けや職人たちの日当を減らせと言っているに等しく、決して賢明な方法だとは思えません。
まず、サービスは有料だと考えた方が、あなたの家作りはずっとスムーズに進行します。
建築主も自分で出来ることは、可能な限り自分でするべきだと匠研究室では考えています。

 前述のように一軒の家は、多くの職人の手をへて各部分が、総合的に組み合わされて建築されています。
では一軒の家は、どんな部分から出来ているのでしょうか。
次の表は、匠研究室が手がけた住宅例です。
ここから法則といったものが、いくつか発見できます。

1. 床面積の大小と、総工事費には相関関係がないこと
2. 全項目が必ずしも一致していないこと
3. 割合で示すと、ほとんど同じ項目があること
4. 割合で示すと、非常に違う項目があること
5. 坪単価がひどく違うこと

 よく坪50万円とか60万円という坪単価の話をききますが、同じ設計者がやって、これだけの違いがでるのは、請け負った工務店の違いによるのでしょうか。
元請けの安価にする企業努力の差が、この坪単価の違いになって表れたのでしょうか。
一部はそのとおりだとも言えます。

 しかし、これはむしろ家の程度=仕様の違いによる差です。
たとえば、車を買うときのことを考えると、よく判ると思います。
同じ車種であっても、200万円のものもあれば400万円のものもあります。
走って曲がって止まるためには、同じ性能(運輸省の基準を満たしているという意味で)がありながら、これほどの金額の違いとなるのはエンジンの排気量の大小、シートは革か布か、ABS付きか、カーナビ付きかなどの仕様が違うからです。
もっといえば、大人4人をのせて運ぶだけなら、80万円くらいの軽自動車でも充分です。

住宅の工事の内容
A邸 B邸 C邸 D邸
総工事費  \11,893,000    \12,739,000   \30,259,000    \40,000,000
床面積(u) 132.00 92.50 168.00 165.00
 〃 (坪) 40.0 28.0 50.9 50.0
坪単価 \297,325 \454,477 \594,363 \800,000
工事の内訳 単位=%
仮設工事 1.30 1.50 1.10 2.80
基礎工事 5.30 6.00 6.10 5.50
木工事 31.50 32.10 30.40 28.80
屋根工事 8.20 4.00 3.60 3.20
左官工事 6.50 3.50 7.10 4.60
内装工事 3.80 3.30 3.60 3.50
板金工事 1.10 5.90 3.10 1.60
塗装工事 1.20 4.00 2.30 1.60
タイル工事 1.80 1.00 1.20 1.50
建具工事 10.00 12.50 11.20 15.60
雑工事 5.00 4.30 4.50 6.60
鉄骨工事 0.00 2.20 4.10 1.00
電気工事 7.30 5.90 5.00 5.50
水道工事 12.00 9.60 5.80 6.50
床暖房工事 5.60 6.20
諸経費 5.00 4.20 5.30 5.50
合計 100 100 100 100

 耐久性があって、雨がもらず風もふきこまず、家としての性能が満たされるという意味では、坪40万円いやもっと安くできます。
同じ車でも倍も値段が違うように、家も同様です。
仕様の違いによって、値段が倍も違うこともあります。
住めればよい(雨露は充分にしのげる)程度から、柱は尾州の檜を使いたいだとか、大理石の風呂が良いとか、セントラル・ヒーティングにしたいとかと、仕様を変えていくとそれにつれて、工事金額も自然と上がる仕組みです。
かかった総工事費を床面積で割ったものが坪単価ですから、坪単価はむしろ結果であり、一つの目安だと考えていただくとよいでしょう。

 こうした仕様をまったく無視して、あの工務店は安いとか高いといったところで、ほとんど無意味です。
その点、住宅展示場は便利です。
実物見本を見ることができますから、これ(=展示されている住宅)と同じものを注文すれば、仕様は保証されています。
見えない内部構造は別ですが、構造の違いによる値段の開きはあまりない。

 間取りと仕様が決まれば、あとは誰に頼んでも大差ないとして、何社から見積もりを取って、一番安い工務店なり大工なりに、あなたの家作りをまかせることにしました。
あとは自動的に建物は出来上がっていきます。
完成して新居へ引っ越しと、あわただしく時間が過ぎて、あなたは新しい家の主になりました。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい