2.一軒の家 その2
元請けの生活は建築主たるあなたによって支えられています。
元請けの工務店は他のサイドビジネスによって、生計を立てているのではありません。
住宅一軒の請負金額が高額のため、細かい項目まで目が届かず、ついあれもこれも無料サービスだと期待しがちです。
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請負金額は各職方に支払う項目を、すべて合計したものとして算出されています。
いまやゴミ捨てさえも有料で、二トン車一台につき2万円くらい払わなければ、捨てることは出来ません。
こうした項目をすべて計上するのは、なかなかやっかいなので、見積書には明示されていないことが多いとは思います。
しかし、こうした費用を無料サービスせよと要求することは、元請けや職人たちの日当を減らせと言っているに等しく、決して賢明な方法だとは思えません。
まず、サービスは有料だと考えた方が、あなたの家作りはずっとスムーズに進行します。
建築主も自分で出来ることは、可能な限り自分でするべきだと匠研究室では考えています。
前述のように一軒の家は、多くの職人の手をへて各部分が、総合的に組み合わされて建築されています。
では一軒の家は、どんな部分から出来ているのでしょうか。
次の表は、匠研究室が手がけた住宅例です。
ここから法則といったものが、いくつか発見できます。
1. 床面積の大小と、総工事費には相関関係がないこと
2. 全項目が必ずしも一致していないこと
3. 割合で示すと、ほとんど同じ項目があること
4. 割合で示すと、非常に違う項目があること
5. 坪単価がひどく違うこと
よく坪50万円とか60万円という坪単価の話をききますが、同じ設計者がやって、これだけの違いがでるのは、請け負った工務店の違いによるのでしょうか。
元請けの安価にする企業努力の差が、この坪単価の違いになって表れたのでしょうか。
一部はそのとおりだとも言えます。
しかし、これはむしろ家の程度=仕様の違いによる差です。
たとえば、車を買うときのことを考えると、よく判ると思います。
同じ車種であっても、200万円のものもあれば400万円のものもあります。
走って曲がって止まるためには、同じ性能(運輸省の基準を満たしているという意味で)がありながら、これほどの金額の違いとなるのはエンジンの排気量の大小、シートは革か布か、ABS付きか、カーナビ付きかなどの仕様が違うからです。
もっといえば、大人4人をのせて運ぶだけなら、80万円くらいの軽自動車でも充分です。
住宅の工事の内容 |
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A邸 |
B邸 |
C邸 |
D邸 |
総工事費 |
\11,893,000 |
\12,739,000 |
\30,259,000 |
\40,000,000 |
床面積(u) |
132.00 |
92.50 |
168.00 |
165.00 |
〃 (坪) |
40.0 |
28.0 |
50.9 |
50.0 |
坪単価 |
\297,325 |
\454,477 |
\594,363 |
\800,000 |
|
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工事の内訳 |
|
|
|
単位=% |
仮設工事 |
1.30 |
1.50 |
1.10 |
2.80 |
基礎工事 |
5.30 |
6.00 |
6.10 |
5.50 |
木工事 |
31.50 |
32.10 |
30.40 |
28.80 |
屋根工事 |
8.20 |
4.00 |
3.60 |
3.20 |
左官工事 |
6.50 |
3.50 |
7.10 |
4.60 |
内装工事 |
3.80 |
3.30 |
3.60 |
3.50 |
板金工事 |
1.10 |
5.90 |
3.10 |
1.60 |
塗装工事 |
1.20 |
4.00 |
2.30 |
1.60 |
タイル工事 |
1.80 |
1.00 |
1.20 |
1.50 |
建具工事 |
10.00 |
12.50 |
11.20 |
15.60 |
雑工事 |
5.00 |
4.30 |
4.50 |
6.60 |
鉄骨工事 |
0.00 |
2.20 |
4.10 |
1.00 |
電気工事 |
7.30 |
5.90 |
5.00 |
5.50 |
水道工事 |
12.00 |
9.60 |
5.80 |
6.50 |
床暖房工事 |
− |
− |
5.60 |
6.20 |
諸経費 |
5.00 |
4.20 |
5.30 |
5.50 |
合計 |
100 |
100 |
100 |
100 |
耐久性があって、雨がもらず風もふきこまず、家としての性能が満たされるという意味では、坪40万円いやもっと安くできます。
同じ車でも倍も値段が違うように、家も同様です。
仕様の違いによって、値段が倍も違うこともあります。
住めればよい(雨露は充分にしのげる)程度から、柱は尾州の檜を使いたいだとか、大理石の風呂が良いとか、セントラル・ヒーティングにしたいとかと、仕様を変えていくとそれにつれて、工事金額も自然と上がる仕組みです。
かかった総工事費を床面積で割ったものが坪単価ですから、坪単価はむしろ結果であり、一つの目安だと考えていただくとよいでしょう。
こうした仕様をまったく無視して、あの工務店は安いとか高いといったところで、ほとんど無意味です。
その点、住宅展示場は便利です。
実物見本を見ることができますから、これ(=展示されている住宅)と同じものを注文すれば、仕様は保証されています。
見えない内部構造は別ですが、構造の違いによる値段の開きはあまりない。
間取りと仕様が決まれば、あとは誰に頼んでも大差ないとして、何社から見積もりを取って、一番安い工務店なり大工なりに、あなたの家作りをまかせることにしました。
あとは自動的に建物は出来上がっていきます。
完成して新居へ引っ越しと、あわただしく時間が過ぎて、あなたは新しい家の主になりました。
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