ブチ切れる老人たち-崩壊する年齢秩序への戸惑いと処方箋
    匠 雅音著 2013.1.25

本論は<Kindle>で上梓した<ブチ切れる老人たち>の冒頭部分です。
目  次
第1章 激増する老人犯罪  事実関係の確認   5.激情化する老人たち
  1.人殺しに走る老人たち   6.広島刑務所:尾道刑務支所の意味する世界
  2.お金や物を盗む老人たち   7.脳が萎縮するから切れるわけではない
  3.性欲の衰えない老人たち   8.むかしの老人は貧しかった
  4.すぐ暴力に訴える老人たち   9.「お年寄りは弱い存在」は本当か
第2章 いま時の老人像とは
        マスコミの伝えない老人たち
第3章 老人とは何か  
       老人たちは肉体労働に生きた?
第4章 年齢秩序の崩壊
       老人は知恵の泉だった
第5章 エイジレスな横並び社会に生きる
         切れないための対策
                 
第1章 激増する老人犯罪   事実関係の確認
  3.性欲の衰えない老人たち
 還暦も過ぎれば、物覚えに自信がなくなり、徐々に体力が衰えてくる。衰える順番は、むかしから歯・目・マラといった。まず歯が衰え、つぎに目が衰える。歯は他人から気づかれにくいが、目は老眼をかけるのですぐわかる。そう言うボクも、いまや老眼が手放せない。

 50歳を越えれば、多くの人は老眼がはじまって、目が見えにくくなる。遠近両用眼鏡をかけても、視力の衰えは隠しようがない。とすれば、次はマラである。加齢によって、マラも役にたたなくなり、性欲も減退してくるのが自然である。

 しかし、最近の老人は、何歳になっても性欲がさかんなままである。一向に衰えないのだ。公にはなりにくいが、老人施設などでも、介護する女性へのセクハラなど、老人の性が問題になっている。

 犯罪面でも、不気味なまでに性欲が露出している。

 2007年9月 8日(三島市)  76歳の男性が、強制わいせつ容疑で逮捕される
 2008年5月13日(船橋市)  72歳のNPO代表が女児に触って逮捕される
 2008年5月31日(所沢市)  62歳の元校長が、ファーストフード店内で女子高校生のスカートのなかに手を入れて逮捕される
 2008年8月13日(大阪府)  70歳の落語家がストーカー容疑で逮捕される
 2008年9月18日(川崎市)  71歳の男性が強制わいせつ未遂で逮捕される
 2009年2月 5日(茨木市)  74歳の司祭が、わいせつ容疑で逮捕される
 2009年3月27日(杉並区)  61歳の男性が、少年買春で逮捕される
 2009年6月11日(中野区)  61歳の男が、強姦容疑で逮捕される
 2009年6月20日(金沢市)  80歳の男性が、ストーカー規制法違反で逮捕され                 る
 2010年6月 3日(港区)    64歳の引っ越し会社会長が、わいせつで書類送検
 2010年6月21日(福島市)   61歳の元刑務所の男性看守が、男性受刑者に性的な行為をして、懲役3年が言い渡される
 2010年7月22日(城陽市)  72歳の見守り隊の男性に、わいせつで有罪判決
 2010年7月23日(久留米市) 75歳の見守り隊の男性が、小学2年女子へのわいせつ容疑で逮捕される
 2010年9月 8日(筑西市)  60歳の男性が、自宅前を通る中学生に、1000円を渡して淫らな行為をしたとして逮捕される

 三島市の76歳の男性は、近所の女性の家に出かけて、「やらせろ」といって下半身を触ったというのだ。相手の女性は80歳なのだが、この男性は他にも高齢の女性をねらっていて、余罪を追及されている。

 所沢市の元校長は、ファーストフード店内で、女子高生から進路相談を受けていた。そのときに、女子高校生のスカートのなかに手を入れているのを、近くにいた男子高校生に見られて警察に通報されたという。

 元校長と女子高生による、合意のうえでのプレイだとしたら、なかなかシュールな話である。しかし、逮捕された元校長が謝罪しているので、合意のうえのプレイだとは思えない。元校長は自分の立場を忘れて、欲望に従ってしまったのだ。

 70歳や80歳の男性が、ストーカー容疑で逮捕されている。警視庁の統計によると、60歳以上の老人がストーカー容疑で逮捕されたのは、2009年で52人と2年前の4倍増である。なかには63歳の女性もストーカー容疑で逮捕されている。

 茨木市の74歳のカソリック司祭は、信者の女性に70回以上にわたり、キスしたり抱きついたりした。相手の女性は、相手が司祭であることもあって困惑し、なかなか警察に相談できなかったらしく、やっと逮捕に至ったという。それでも司祭は、合意のうえだと開き直っているらしい。

 城陽市と久留米市の例にいたっては、悲劇を通りこして喜劇に見えてくる。ここでいう見守り隊というのは、独居の高齢者を見守るのではない。小学校へ通う子供たちを、不審なヤカラから守るために結成されている。その見守り隊の隊員が、見守るべき子供に手をだしてしまったのだ。しかも、2人とも70歳を越えているのにもかかわらず、欲望を我慢できなかったとしかいいようがない。

 煩悩から逃れられないのは、凡人の常である。ボクも美人がとおれば、今でも、つい目で追ってしまう。また、女性の豊かな胸をみて、妄想を逞しくしたりもする。歳をとれば、煩悩に惑わされなくなるかと思っていた。恥ずかしながら、何歳になっても煩悩の虜のままである。

 しかし、妄想で止まっているのと、実際の女性に手をだしてしまうのは、まったく別次元の話である。妄想するだけなら推理小説家だが、現実に手をだすのは犯罪者である。妄想から現実の行動への架け橋を渡ってしまう、そんな老人が増えている。

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