八ヶ岳山麓のガラス箱   No.16 

現場監督さん−その2

 現場監督は肉体労働をしないとすると、一体何をするのか。
現場監督は、仕事の段取りをする。
建築の世界では、段取り8分といって、段取りが非常に大切にされる。
段取りとは仕事の手順を組み、じっさいに身体を使ってくれる職人を手配することである。
では段取りに失敗すると、どうなるか。
その答えは、建築が不可能になるである。
それくらいに段取りは大切である。

 右上の写真は、基礎の配筋を写したものだ。上に向かってのびている鉄筋の間には、上から柱が落ちてくる。
そのため、この鉄筋は柱の分だけ空間がないと、後で柱が立てこめなくなる。
しかし、問題はそこにあるのではない。
実は、設計図面では、白い矢印の鉄筋が繋がるように指示されている。
図面通りに施工すると、鉄骨が入らなくなってしまう。
そこで、現場監督はこの鉄筋を柱型の手間で止めるように、鉄筋職人に指示をだす。
その結果が右上の写真である。

 そして後日、柱が空けておいた空間に、柱を立てこむと、曲がった鉄筋(右下写真の白矢印)を加えることによって、はなれていた鉄筋をつなげるのである。
それが右下の写真である。
もし、図面通りに施工していたら、柱が立てこめなくなっていた。
現場監督が先を見越して、鉄筋を途中で止めていたから柱が入って、結果として図面通りに完成したのである。

 設計者がこの配筋を変更したらどうなるか。
現場監督の仕事はまったく役に立たなくなってしまい、もう一度最初から段取りの組み直しとなる。
職人の仕事は、監理者の指示で手直しになれば、改めて日当が支払われる。
やり直しになっても、職人はただ働きと言うことはない。
しかし、現場監督は日給で働いていないので、手直しになっても改めて報酬はでない。

 段取り替えは厳しい仕事である。
職人たちは特定の1人の現場監督の仕事をしているわけではない。
様々な現場に行く。
そのため、先まで予定が入っている。
一度予約をキャンセルすると、次に職人の手が空くまで待たなければならない。
その影響は1種類の職種に止まらず、次々と影響が及び、たった1日の予定を変えただけで、何十人もの職人に影響がでる。
工事が順調にいけばいいが、段取りが狂うと現場監督は胃が痛くなるに違いない。
ましてや、好き勝手なことを言う設計者にあたったら、胃がいくつあっても足りないだろう。(2005.04.06) 

「タクミ ホームズ」も参照下さい
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