八ヶ岳山麓のガラス箱   No.14 

柱が建つ
 前回までの話は、2004年のことだった。
12月の初めには、建築場所を決め地面を掘った。
そして、柱を1本抜くことが決まり、現場は順調に進むはずだった。
そこは建築業界のこと、正月休みに入ってしまうと、なかなか仕事は始動しない。
そうこうしているうちに雪が降り始め、工事は遅れ始めた。

 東京近郊では、雪が降ってもすぐに融ける。
しかし、八ヶ岳の麓は寒い。
降った雪はなかなか融けない。
コンクリートの保護はしていても、コンクリートを打設した日に、雪が降るのはこまる。
現場監督は、天気予報とにらめっこで、工程を考える。
地業をして、捨てコンをうち、鉄筋をくむ。
結局、柱が建つのは1月も下旬になってしまった。 

 設計者は暖房のきいた室内で仕事ができるが、現場ではそうはいかない。
寒い中での仕事は大変である。
小規模な工事では、設計者が工事監理者をかねることが多いが、この現場も設計者と監理者は同一人物である。
 
 今までは建築主と一緒に現場に行くことが多かった。
しかし、今回は建築主の都合がつかず、柱の建て方検査には監理者だけで行った。
1人で行くときは電車である。
小淵沢の駅に着くと、あたりには雪が残っている。
 空はどんよりと曇っており、小雪が舞ってもおかしくない空模様である。
迎えに出てくれた現場監督の車で、現場へと向かう。
現場には鉄骨屋さんとサッシ屋さんが待っていた。
 現場監督と4人で向かい合うが、風を遮る物がないので、寒いことおびただしい。
図面を開こうにも、風で図面はめくれるし、そのうえ寒さで指がかじかんで思うように動かない。
寒さになれているはずの、地元の人もやはり寒いようだ。
そんななか、柱の立入をみる。
垂直を確認するのだ。
柱は垂直に立っているように見えるが、垂直に立てるのは実はけっこう難しい。
今回は 1 ミリ程度の倒れだから、合格点である。

 鉄骨屋さんから溶接に関して質疑が出た。
熱ひずみに対処するため、図面の90%の溶接長さで止めたいという。
力のかからない部分なので同意する。
サッシ屋さんから送られていた図面の寸法が違っていたので、それを直してもらうように頼む。
(サッシ図面が後日送られてきたので、それを承認する。
この承認があってから、サッシは製作に入る)

 今後、基礎のコンクリートを打設して、土を埋め戻し、ブロックを積み始める。
まだ天気頼みの工事が続く。
小さな現場だけれど、なすべきことは大きな現場と変わらない。
監督は頭が痛いことだろう。打ち合わせが終わる頃には、本格的に雪が降ってきた。
1月31日は、寒い思いの1日だった。

「タクミ ホームズ」も参照下さい
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