八ヶ岳山麓のガラス箱   No.12 

床付け面
 建築の位置が決まれば、設計者の役割は、ほぼ終了している。
あとは、図面に添って工事が進行するように、監理する仕事だけである。

 地面の上には、何の基準もないので、どこをどのくらい掘ったらいいか判らない。
そこで地縄に従って、遣り方と呼ばれる施工のガイドをつくる。
 土が掘られている周りをめぐる細い木が遣り方である。
遣り方から張られている黄色い糸の真下が、建築物が置かれる場所である。
職人たちは、この糸をたよりにして、掘り進んでいく。

 建物の基礎が地面と接する面を、床付け面と呼ぶが、この地質が加重を負担するので、きわめて大切である。
床付け面の検査には、設計者が立ち会う。
 今回の床付け面は、残念ながら盛り土であった。
切り土と呼ばれる自然の地盤であれば、大きな荷重をかけても大丈夫だが、盛り土は不同沈下しやすいので対策が必要である。
上に載る建物が、鉄筋コンクリート造の3階建て以上であれば、杭を打つ必要がある。
今計画は平屋で、しかも加重が軽いので、杭は打たない。
そこで、原設計よりも割栗石を厚くし、充分に転圧して地盤改良をすることにした。

 建物の規模に対して基礎が深いのは、表土が凍結する恐れがあり、基礎の底盤を不凍帯におく必要があるからである。
凍結する表土に基礎をおくと、建物が霜柱で持ち上げられてしまう。
そこで地面から70センチも掘ったのである。

「タクミ ホームズ」も参照下さい
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