八ヶ岳山麓のガラス箱   No.03

ガラスの壁
 最初から、No.02のような平面図が出来上がったわけではない。
建築主の要求を実現するためには、大地に横たえた身体に、なるべく障害を設けたくなかった。
しかし、床だけを用意すれば済むわけでない。
大地に身体を横たえても、雨はかかってはいけない。とすれば、壁と天井をたてなければならない。

 すると当然に、平面図は床を除いて、すべてがガラス張りとなる。
しかし、天井のガラス張りは、美しく保つには手入れが大変である。
落ち葉がつもり、やがて埃で透明ではなくなる。
そして、天井面をガラスにしたら、夏は暑くて使い物にならない。
そこで天井は不透明にせざるを得ない。

 壁はもちろんガラスが可能である。
一部屋だけでは、生活が出来ない。
トイレや洗面所も、台所も風呂も必要である。
これらの水回りは別棟にして、中庭や渡り廊下で結ぶ案を考えた。
(海を食べる家では風呂場だけが別棟だった)
この案には大きな魅力を感じた。
しかし、立地を考えると、冬の寒さに問題がある。
現代人に溲瓶を使えとは言えない。

 結局、下記のようになった。
つまり、別棟の水回りとは、ガラスの渡り廊下でつなぐ。
しかし、これでも実用には、まだまだ問題が多い。
ガラスだけでは冬の寒さををしのげない。
そこで内側に障子を立て込むことにした。
暖房がないと寒いだろうが、これで何とかなるかも。
 ここに至るまで、すでに議論百出だった。
ガラス張りの家で、朝、目が覚めたら、一体どうなるのだ、と建築主に質問した。
境界には囲いもないから、近所の人がガラスの近くまでやってくるだろう。
あられもない寝起きの姿を見られるが、それでも良いのかと何度も念を押した。
(防寒目的だけではなく、目隠しとしても障子は必要だと考えたが、建築主は障子にあまり拘らなかった)

 「OK」という軽い返事。
う〜〜ん、とうなる設計者。
豪放磊落な建築主に対して、柔弱な設計者は4周にシャッターを落とすことにした。
この提案には、建築主も賛同してくれた。
しかし、最初の要求から何と遠くまで来てしまったことか、重装備になってしまった。
大地に寝そべる空間を作るのは難しい。

「タクミ ホームズ」も参照下さい
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