シングルズの住宅

住宅及び居住環境における1人世帯の研究               1994年1月記        目次を参照する

第4章  ワンルーム・マンション

3.ワンルームマンション建築の指導要綱   その2

 ワンルーム・マンションの建築の物理的な数字はおくとして、とりわけ問題になった管理面の規制をみてみよう。
(ただし管理面につては、すべての自治体の指導要網が詳細な規定をもっているわけではない。)

千代田区
第13条…入居者にその内容を確認させるものとする。
2.前項の使用規則等には、騒音の発生、ごみの投棄又は散乱、違法な駐車、自転車の放置、危険物の持ち込みその他近隣住民に迷惑を及ぼすおそれのある行為についての禁止規定を設けるものとする。*21

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杉並区
管理に関する基準
第7集 4.近隣住民その他に迷惑を及ぼす行為を禁止するため次の事項をいれて使用規則を定め、居住者に厳守させること。
ア.風俗及び住環境上、好ましくない用途に使用すること。*22

練馬区
管理に関する基準
1.管理人を置くこと。…
2.3.<省略>
4.入居者と契約する前に次の事項などを…遵守させること。
ア.ゴミは…
イ.…近隣の生活環境を害する迷悪行為をしないこと。
ウ.発火、爆発のおそれのある危険物を持ち込まないこと。
エ.…違法駐車をしないこと。 *23

千代田区の2.「
…危険物の持ち込み
杉並区のア.「
風俗及び住環境上、好ましくない用途
練馬区のウ.「
発火、爆発のおそれのある危険物

 これらは一体どういうことを想定しているのであろうか。
ほかの区の指導要網は条文が少ないこともあって、こうした条項は必ずしも記されていない。
要綱のなかで、入居者の管理を明確にする意図は判るにしても、こうした条項を見ると、ワンルーム・マンションの入居者のイメージが、初めから歪んでいるように思えてしかたないのである。

 「ワンルーム・マンションは悪の巣窟だよ、いやそれは冗談だけれどね…」と語ってくれた練馬区の担当者は、
ワンルームに入居するのは、水商売、三国人というイメージがあって、独身者は無責任で、深夜に宴会を開いたりするし、近所つきあいをしないから、嫌がられるんだよ。反対する人たちは、最初から決めつけているからね」 と語り継ぎ
「最初から決めつけないで欲しいと言っているんですけれどね」と、言ったのである。

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 ここに、はからずも本音がでたような印象であった。
もう一度確認するが、担当者個人を批判しているのでは決してない。
ワンルーム・マンションに入居する人間は、無責任なエイリアンだという雰囲気が全体的にあって、その上で、当時のワンルーム・マンション建築反対運動があったのではないか、と聞直したいのである。
全体的にそうした雰囲気があれば、担当者個人がそれから自由でいることは不可能であろう。
それゆえ個人を問うているのではない。

 世田谷区議会に提出された建築反対の請願の中には、「…学生が43%、サラリーマン・OLが36%、その他が21%となっているが、家賃が高くなる傾向に伴い、学生の割合は瀬次減少しつつある模様である。」*24 
という数字を上げているものがある。
が、当時行政は独身者の住宅をそれほど大きな問題とは考えず、反対する住民の方に顔を向けていたのではないだろうか。

 「
…共通する問題も多いため、東京都を含め関係14区が集まり、情報交換や対応策の検討のための連絡会を設けて協議し、各区の状況にそう内容で、建築紛争条例の改正や、指導要綱等の制定が行われた」*25
という。
しかし、住民側だけではなく、行政側にも独身者=シングルズにたいする偏見があったので、一斉にワンルーム・マンション建築の指導要綱が作成されたのではないか。
というのは、もし住環境を建築的にのみとらえていれば、ワンルーム・マンションを規制する指導要綱を作成することなく、中高層建築物への指導要網や、共同住宅の指導要綱で対応できたはずなのである。
世田谷区にかぎらず、ほとんどの自治体がワンルーム・マンション建築の指導要綱のほかに、集合住宅の指導要綱をもっている。
それを改正すれば済むことであって、なぜことさらにワンルーム・マンションのみを対象とした指導要綱を、作らなければならなかったのか理解に苦しむのである。

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 足立区と江戸川区は、共同住宅などの指導要網だけで対応したのである。
それを除くと、
当区は、以前から独身者が多く、むしろ指導要綱を作るより、それぞれのケースできめ細かく対応したほうがいいので、『ワンルーム・マンション計画にあたってのお廉い』を作るにとどめました」*26 という新宿区と、
当区は人口が減っていますから、それどころではありません」という中央区だけが例外であった.

 行政の対応には、ワンルーム・マンション紛争をもう一つ別の見方からとらえる目があった。
従来から、行政はすでに家が建ち並び、生活が営まれている地域では、まちづくりが住民の権利を制限する側面を不可避的に内包してしまうので、なかなか積極的に手が打てなかった。

 「
…住民自身も自ら手足を縛るような都市計画制限に同意しないだろう、と行政は住民を半分は信用していません。『みなさんの要求がまとまったら応じます』という態度です」*27   
であったが、建築紛争をテコにまちづくりをする好機だと、とらえるところもあったようである。

「ワンルーム・マンション紛争と建築協定制度について、−新しいまちづくりに向けて−」*28   
つまり、ワンルーム・マンションという新参者の登場を媒介として、建築協定をつくることによって、町の整備を実現しようとしたのである。
しかし、建築協定を地域になじませる努力と、単体のワンルームマンションに規制の網をかけるのは、別の問題だと思えるのだが。


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