シングルズの住宅

住宅及び居住環境における1人世帯の研究               1994年1月記        目次を参照する

第4章  ワンルーム・マンション

1.木賃アパートからワンルーム・マンションへ   その1

 1980年ころまでは、シングルズの大部分は20〜29才までで構成され、とりわけ20才前後の若年層が圧倒的に多かった。
当時のシングルズは、社会がまだ貧しかったことも手伝って、狭く貧弱な設備しかないに部屋に住んでいた。
それは、下図のように中廊下の両側につらなる、4畳半もしくは6畳の畳の部屋であった。

調査により作成

 中廊下の突き当たりには流しやトイレがあって、それらは居住者の共用となっていた。
もちろん、こうした建物は木造2階建てで、しかも風呂はなかった。
そして当時は、どこにでもあった銭湯に居住者は通うのを常とした。
学生や卒業直後の勤労者を対象としたこうした木造アパートは、俗に木賃アパートと呼ばれ、山手線や私鉄沿線を中心として、きわめて普通にみられたことは、東京都住宅自書でも指摘している。*1

 しかし、わが国が全体的に裕福になってきたせいでか、こうした木賃アパートは、もはやシングルズには魅力あるものではなくなっている。
たとえ学生であっても、設備共用の木賃アパートには見向きもしなくなった。
最近の学生たちが好んで住むのは、俗にワンルーム・マンションと呼ばれるものである。
それは、バス、トイレ、洗面所を一体化したユニットバスを持つアパートで、いわゆる設備を各部屋の専用に持つタイブである。
各部屋が16〜20平方メートルからなるこうしたアパートは、最近たくさん建築されている。
もはや、設備共用の木賃アパートは建築されないと、いってもいいくらいである。

…都市における住宅の需給構造に巧みにのった大変売れゆきの良い商品であり、『木賃アパートのピンチヒッター』的な様相を示した…」*2 
のである。

 今やシングルズの住処というと、ワンルーム・マンションをさすくらいにまで普及してきた。
そこで、本研究では最近のシングルズの住処が、ワンルーム・マンションにあるのではないかと仮定して、分析をすることにした。

 ワンルームマンションは、イメージとしてはこんなものだとは言えても、いまだ定形をもつに至ってはない。
ワンルーム・マンションが建築される場所によつて、それがワンルームであったりそうでなかったりする。
つまり、各自治体によって定義が違うのである.

 「各地の実例から、あえて平均的なイメージを求めると次のようになる。
■ワンルーム形式の居室に、ユニットバスとキチネットといった設備をもち、収納スペースはもたず、ベランダがある。
■住戸規模は、1戸平均15u程度であり、きわめて極小である.(ちなみに、第三期住宅建設五ケ年計画における単身者の最低限度水準は、住戸専用面積で16u以上)
■建物の高さは、用途地域や日影規制等の法規制から10m未満すれすれであり、4階建て、外階段片廊下形式が主流である.(階段で頭がぶつかるものもある)
■外観はタイル貼りなどで一見して近代的でシヤレた清潔な感じがする。これらの、外観や空間構成のもつイメージは『ビジネスホテル』のもつそれである。
■敷地は、100〜300u程度のものが多く、従前一宅地である。比較的、交通の便の良いところに立地する。
■住戸数は、10〜30戸程度が主流であり、基本的には住戸のみで構成され、管理人室などはない。(最近は、自治体の要綱などの関係から、小規模のものが増えつつある。)
■全体としては、窓先空地を含めて、有効な空地や植栽はほとんどない。
■一住戸あたりの敷地面積は、10u/戸未満のものが多く、木賃アパートに比べても高密となっている。
これらの立地条件や規模のもつイメージは、『木賃アパートの近代化』であり『立体的なミニ開発』である。
■日常的な維持管理は、専門の管理サービス会社が巡回によって行っている。
■マンションの所有者と居住者は異なる場合が多い。所有者は地方在住者が多く、マンション取得後の入居者の斡旋から家賃徴収まで全て、管理サービス会社が代行して、住宅ローンの返済にあてていく。ローン返済による節税効果もあげられる。投資と節税のリースマンションといわれる所以である。
■マンションの入居者は、20代前半の学生や単身サラリーマンであり、流動的である.(しかし、最近の実例では、ワンルームマンションでの1人ぐらし老人の存在もみられる。)
■分譲価格は、都内の例だと、一般的に、1千万円程度、賃貸価格は5〜7万円/月程度である。
これがワンルーム・マンションのもつ平均像である。」*3

と、井上氏が述べているが、概ねこのとおりであることに筆者も同意する。
ただし、井上氏がこれを書いているのは1984年であるから、それ以後いくらか状況が変わっている。
本研究が使うワンルーム・マンションについては、次で論述していく。


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