シングルズの住宅

住宅及び居住環境における1人世帯の研究               1994年1月記        目次を参照する

第2章 シングルズの諸特性

4.シングルズの今後    その1

 今後シングルズが増えると、筆者が考える理由はいくつかある。
以下に列記する理由が、単独で作用するわけではない。
すべてが複合的に働いて、シングルズの増加へと結果するのである。
しかし、すべてを一度に述べることはできないから、各々をべつべつに検討していくことにする。

1.出生率の低下

 わが国の特殊合計出生率(以降出生率という)は、最近の80年間、多少の凹凸はあるが、一貫して下がりつづけている。
それが今後も下がり続けるかは、論議の分かれるところである。
というのは、出生率の低下に悩んだ西欧諸国では、すでに出生率が下げ止まった国があるからである。 *19 
そのため、わが国でも早晩出生率が下げ止まると予測する向きもあるかも知れない。

諸外国の合計特殊出生率
イタリア(1984年) 1.28
西ドイツ(1985年) 1.35
カナダ(1985年) 1.63
日本(1988年) 1.66
イギリス(1985年) 1.81
フランス(1985年) 1.82
スウェーデン(1985年) 1.84
アメリカ(1984年) 1.84
「女性のデータブック」P3より
合計特殊出生率=1人の女子が再生産年齢(15−49歳)の間に産むと考えられる子どもの数

 しかし、筆者はわが国では、今後も出生率は下がり続けると予潮している。
けだし、前記の諸国では、出生率をあげるために子を生みやすい環境作りに努力した結果、出生率は上昇に転じたのである。
その努力でまず、特筆されるのは、婚外子の社会的な認知である。
それまでは、結婚している男女間に生まれた子どもだけを正当であるとしてきたが、生まれてくる子どもに違いはないという理念によって、法律上の扱いを婚外子=非嫡出児であっても嫡出児とまったく同じにした。
また、社会的な風潮も、もはや姦通した女性に緋文字を課すようなことはせず、婚外の子どもに対して寛容になった。
これによって、今までなら中絶されていたものが、出産されるようになったのである。それが出生率の向上につながった。
しかし、次の表を見るまでもなく、わが国における非嫡出児の誕生は、極端に少ない。
わが国でも非嫡出児にたいする民法上の差別は、憲法違反だという学説が優位ななかで、現実には嫡出児と非嫡出児にたいする差別的な異なった扱いが支配的である。
わが国の現状では、婚外の子どもの護生を、嫡出児と同様に認める社会とはならないだろう。

日本の非嫡出児出生率の推移(%)
1947年 3.79
1950年 2.47
1955年 1.68
1960年 1.22
1965年 0.96
1970年 0.93
1975年 0.83
1980年 0.80
1981年 0.86
1982年 0.86
1983年 0.92
1984年 0.99
1985年 0.99
1986年 0.97
1987年 0.98
1988年 1.01
非嫡出児/全出生数
「女性のデータブック」(P17)より

 出生率をあげる次に大きな努力は、子育てを女性だけの役割から解放し、男性もそれに積極的にとりくめる社会的な制度や、社会的な常識の確立がなされたことである。
もちろん、未だ完全平等にはなっていないが、わが国に比べると、西欧とりわけ北欧のそれは格段に異なっている。
その背景をいちいち列挙しないが、女性の労働力を男性のそれと同様に期待している社会では、出産・育児から女性の負担をできるだけ軽くする努力がつづけられてきた。
その結果、女性にとっては、社会的な労働と育児の両立がより容易になって、それまで中絶されていたのが出産へと結果するようになった。

="text/javascript" src="http://pagead2.googlesyndication.com/pagead/show_ads.js">

 わが国でも男女平等の努力は続けられてはいるが、その歩みは遅々として進んでいない。
女性の労働にとって、出産・育児は大変大きな足かせとなっている。
血縁幻想の強いわが国において、子どもは社会が育てるのだという認識が、一般化することにたいして悲観的にならざるを得ない。
そのため、子育ては女性の役割であり続けるだろうので、出生率の向上は困難であろう。

 結婚した女性の出産は平均2人であるから、わが国おける出生率の低下は、結婚しない女性の増加を意味しているのである。
もちろん、わが国の母子の結びつきは非常に強く、成人しても親と同居している男女はたくさんいる。
しかし、結塘しない女性の増加は、親のもとに同居したままの女性も増やすだろうが、1戸を構える女性も増やすはずである。
その逆は決してありえない。
第1章で世帯構成員の減少を述べたが、もし結婚する割合が一定で(実際はこれも下がっているのだが)、しかも結婚したカップルが出産する子どもの数が不変だとすれば、出生率の低下はシングルズの増加に結果するのである。


次へ進む