シングルズの住宅

住宅及び居住環境における1人世帯の研究               1994年1月記        目次を参照する

第2章 シングルズの諸特性

4.シングルズの今後    その2

2.所得の向上

 貧困な社会では、独立住宅を構えたくとも、それが不可能であることは、敗戦後のわが国を思い出してみればすぐに納得がいく。
つまり、1戸(アパートやマンションを含む)を構えるためには、それに見合う収入が確保されないと不可能なのである。
今後の雇用状況は、終身雇用が崩れ、能力給が普及すると予測される。
これは若年労働者層の所得が、高齢者に比して相対的に向上することを意味する。
今まで1戸を構えることが、経済的に許されなかった人々にも、その可能性がでてくるのである。

……高い所得は独立した住居単位を購い、他からわずらわされない独自の家庭生活の営みを可能にする有力な手段であると考えられる。いわば、金で物理的なプライバシー空間を購えるものと理解される」 *20

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 都市部の住宅がすこぶる狭いことをひとまずおくとすれば、住宅の戸数は不足することはなくなってきた。
そのため、それに見合った所得が確保されれば、誰でも1戸を構えることが可能になっている。
それゆえ所得の向上は、シングルズを生み出す原因になることはあっても、逆に働くことはない。

 成熟社会になってきたので、今までのように国民全体の個人所得の大幅な向上は望めないだろう。
しかし、個人所得の向上はもちろんシングルズの増殖を促進することはあっても、その逆はありえないことは前記の理由であきらかであろう。

3.平均寿命の上

 平均寿命は年毎に延びて、わが国はとうとう世界でも有数の長寿国となった。
しかし、食生活の変化で成人病が増えており、このまま平均寿命が伸び続けるかどうかは予断を許さないが、平均寿命の上昇は明らかにシングルズを増やす。
けだし、平均寿命がいくら延びても、配偶者の両方が同時に死ぬことはありえないので、必ずどちらかが寡婦(夫)となる。
その傾向は、寿命が延びれば延びるほど顕著になる.
寡婦(夫)になったらただちに、子どもや孫と同居するかと言うかとそうとは限らない。
それゆえ、長寿は必然的にシングルズを増やす。

 わが国では老人の独居は西欧諸国lまど顕著ではなく、子どもや孫と同居する傾向が強いのだが、それでも老人シングルズは確実に存在する。
1985年の「老人の生活実態」調査によると、12.4%が一人暮らしであり、また1989年に東京都が行った世帯主を対象にした「高齢者の住まいに関する調査」によると、8.6%がシングルズである。*21

 老人シングルズは70才を境にして、本人の死亡や子どもや孫との同居によつて、シングルズを解清しシングルズは減っていく。
けれども最近のさまぎまなルポルタージュが報告するところによると、最期までシングルズの生活を希望し、それを実現している例が増えているそうである。

昭和80年国勢調査モノグラフシリーズNo.8(P66)より

 こうした傾向はありながら、長寿化はシングルズを増やしていく。
しかし、老人シングルズはあとで詳細に述べるように、必ずしもバラ色のシングル生活を楽しんではいない。

4.晩婚化・非婚の上昇

 晩婚化と非婚とは異なった概念である。
しかし、現在の動きは結婚にたいして、積極的に拒絶するのではなく、むしろ、結婚へのためらいが長期化し、そのまま非婚になっていく形が多いように感じる。
両者を区別する統計や調査は困難であるから、あえてこの領域には踏み込まないで、別々に考えることにする。

 晩婚化だけをとってみれば、それは明かである。

…女子の20〜24才で…1920年には84.9%、1935年でも53.3%あった有配偶率が1970年には27.7%、1980年には21.9%、そして1985年には17.9%と激減しており……。…25〜29才の有配偶率をみると、1920年では85.7%、1930年では87.8%もあった女子有配偶率は1980年では74.5%、1985年では実に67.7%へと低下している」 *22

 女性だけではない。男性の結婚年齢も上昇しており、結婚へのためらいは、統計のうえにはっきりと表れている。

 晩婚化と非婚の関係は不明であるが、非婚だけをとってみると、晩婚化と同様に増えているのである。

…1970年、全国平均で2%弱にすぎなかった男性50才時の未婚率は、1990年には5.6%に上昇した」*23

晩婚化や非婚の上昇が、シングルズを増殖させることは、説明を要しないであろう。


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