幸いなことに重大な麻痺も残らず、ほんとうに軽い脳梗塞でした。でも、自分では気が付かないおかしなところがあるかもしれません。匠雅音が、ベッドの上で過ごした11日間の記録と、その後日談です。
 脳梗塞という言葉はよく聞きますが、たいていの人は「まさか自分が・・」と思っているのではないでしょうか。ボクももちろんそうでした。だから初期症状が出ても脳梗塞とはまったく気が付きませんでした。
 脳梗塞に襲われたときに「あっ、これはやばそう」と疑えるように、出来るだけ細かく当時を思い出してみました。脳梗塞の治療は、ある意味時間との勝負になります。人により症状は異なるでしょうが、イザというときのために脳梗塞の初期症状がどんなものか知っておいても、決して損はないと思います。

2008年6月15日(日)

−退院後 第16回− 頭がよくなった気が・・・

 4月の末に、脳みそが左から右に流れてから、もう1ヶ月半たった。不思議なことに、あれから頭が良くなったように感じる。
 脳梗塞の発症前後には、確実に物覚えが悪くなっていた。映画俳優の名前など、思い出せそうで思い出せない。喉元まで出かかっていて、なお思い出せない。
「ほら、あれ、あの人だよ…、あの映画にでていた」といった会話を、繰りかえすばかりだった。物忘れするのは歳をとると、誰でもおきることだと言われた。自分でも、やっぱりボクも歳をとったのか、と諦めていた。

 しかしである。脳みそが流れてからは、そうしたことはぐっと減った。まず、必要なことは簡単に思い出せるようになったし、思い出せないときには、完全に思い出せなくて、もどかしさを感じることはない。思い出せそうで思い出せないと、七転八倒するようなことはもうない。

一体、頭のなかで何がおきたのだろうか。流れて嬉しい脳みそである。

 あいかわらず月に1度、病院へ行く。毎日、5錠もの薬を飲んでいる。薬づけといっても良いかも知れない。なんとか、薬を減らしていこう、と思う。

 バイ・アスピリンはともかく、血圧降下剤も何とか止めたいが、まずはリピトールだ。たった一度だけ高かったコレステロール値だから、運動と食生活の改善で、なんとか正常値になっているのではないか。再検査すれば正常値になっているのではと思う。
 そう考えていたので、今回はF医師になって初めて、血液検査を入れてもらっていた。

 血液検査の結果は、いつも40分くらいで上がる。だから、診断予約時間の1時間前に、病院へ行って血液検査をしてもっていた。しかし、今回は血液検査の機械が故障したとか、2時間も待たされてしまった。
 血液検査の結果は、まったくの正常値だった。機械が故障したせいじゃないよね、と確認すると、F医師は笑っていた。では、ということで、リピトールを2ヶ月止めてみることになった。
 2ヶ月後にコレステロール値が上がっていたら、また飲むということを約束させられる。
 脳みそが流れたなんていっても、F医師は興味を示さないだろうから伝えなかった。

 ボクの食生活の改善とは、次のようなことだ。
1.昼食は外食を止めた。自分で作る。いまは、オニオン・スライスの鰹節かけに凝っている。
2.牛乳はロー・ファット。これが美味くないのだけど仕方ない。最近、美味いローファットをみつけて、ちょっとホッとしている。
3.野菜にはドレッシングをつかわない。もともと生のまま食べていたから、ほとんど気にならない。むしろ、野菜の味が良く判るようになった。
4.魚のアラを買ってきて、自分で煮るとなかなか美味くできる。これはお気に入りである。
5.焼鳥屋では、レバーをやめた。そして、泣く泣く塩からタレに変えた。その結果、塩タンが食べられなくなった。
6.毎日、薬だと思って赤ワインを飲む。もともと赤ワイン、しかもボルドー系のしっかり目が好きだったから、まったく問題はない。

これは美味い薬である。こんな薬ばかりだといいのに、と恨めしく思う