幸いなことに重大な麻痺も残らず、ほんとうに軽い脳梗塞でした。でも、自分では気が付かないおかしなところがあるかもしれません。匠雅音が、ベッドの上で過ごした11日間の記録と、その後日談です。
 脳梗塞という言葉はよく聞きますが、たいていの人は「まさか自分が・・」と思っているのではないでしょうか。ボクももちろんそうでした。だから初期症状が出ても脳梗塞とはまったく気が付きませんでした。
 脳梗塞に襲われたときに「あっ、これはやばそう」と疑えるように、出来るだけ細かく当時を思い出してみました。脳梗塞の治療は、ある意味時間との勝負になります。人により症状は異なるでしょうが、イザというときのために脳梗塞の初期症状がどんなものか知っておいても、決して損はないと思います。

2008年4月21日(月)

−退院後 第15回− 脳みそが流れる

 脳梗塞になって、後遺症が残らなかったと言っても、やっぱり何となく頭が悪くなった気がする。血のめぐりが悪い、という言葉があるが、血のめぐりは頭の良さを保つものではないか。脳梗塞をやると、血のめぐりが悪くなった気がするのだ。だから身体的な後遺症がないといっても、頭が悪くなったという後遺症が残った気がしていた。
 1週間前のある朝方、まだ起床するには早い時間。うつらうつらとして、左向きから右向きへと寝返りをうった。

そのとき、頭のなかで脳みそが、左から右へと流れる感じがした

 ちょうど砂が流れるように、ざざっーと右から左へと頭のなかを何かが流れる感じがした。そして、身体がベッドに引き込まれるような、不思議な不快感が残った。あわてて反対に寝返りを打ったが、これは何でもなかった。そして、もう一度左向きから右向きへと寝返りをうった。
 やはり脳みそが流れる感じがする。
 こう感じたが、目が覚めたわけではなかった。

 そんな感じがしていたが、まだ寝ていたので、夢かと思って起床しなかった。しばらく意識をうしなって、また寝てしまった。いつも起きる時間になり、起床したが、その時には何でもなくなっていた。
 そして、トイレに向かい、下を向くと、軽くめまいがした。脳みその流れを思いだして、不思議な感じになった。その後は、何の支障もなく、普通に生活してしまった。そのため、朝方の出来事は忘れてしまった。

 翌朝、同じ時間。
 左向きから右向きへと寝返りをうつと、昨日よりずっとはっきりと、脳みその流れを感じた。そして、浮遊するような不快感におそわれた。昨日より、はるかに強い。朝方だったが、それで目が覚めたというわけではなく、しばらく寝ていた。  たんに夢だったのだろうか。それにしてはリアルな感じがした。そして、トイレに立つと、昨日より強くめまいがして、気がつくと扉をつかんでいた。しかし、すぐに何でもなくなり、いつもの日常に戻っていた。

 左向きから右向きへと寝返りをうつときだけ、脳みそがながれる。そして、浮遊感をともなった引き込まれるような不快感を感じる。反対に、右向きから左向きへと寝返りをうっても、脳みそはながれない。もちろん、不快感もない。不思議な体験だった。

 しかし、である。
 脳みそが流れる感じがした後、頭が良くなった感じがする。思い出すのも早くなった気がするし、ど忘れも減ったように感じる。こんなことがあるのだろうか。