幸いなことに重大な麻痺も残らず、ほんとうに軽い脳梗塞でした。でも、自分では気が付かないおかしなところがあるかもしれません。匠雅音が、ベッドの上で過ごした11日間の記録と、その後日談です。
 脳梗塞という言葉はよく聞きますが、たいていの人は「まさか自分が・・」と思っているのではないでしょうか。ボクももちろんそうでした。だから初期症状が出ても脳梗塞とはまったく気が付きませんでした。
 脳梗塞に襲われたときに「あっ、これはやばそう」と疑えるように、出来るだけ細かく当時を思い出してみました。脳梗塞の治療は、ある意味時間との勝負になります。人により症状は異なるでしょうが、イザというときのために脳梗塞の初期症状がどんなものか知っておいても、決して損はないと思います。

2007年8月13日(月)

−退院後 第7回− 右手のむくみ

 8月に入って、暑い日が多くなった。汗をかくので、身体から水分がでてしまう。水分補給のために、水を飲まなければ、と自分に言い聞かせていた。そして、マメに水を飲むようにしていた。
 13日の朝、気がつくと、右腕が少しむくんでいる。夕べ寝る前に、水をたくさん飲んだせいだろうか。手の甲のほうから見ると、右手のほうが明らかに大きい。手のひらを見れば、左手はシワシワだが、右手はほとんどシワがない。痛くも何ともないが、何だか不気味だ。

 脳梗塞という病気は、ほとんど自覚症状がない。何らかの前触れがあると書いた本もあるが、医学に素人の本人には、何が前触れだか判らないことが多い。
 目が覚めたときに、下になっていた腕がしびれるのは、誰もが経験することだし、立ちくらみやふらつきなど、普通にあるだろう。ちょっとした変調にたびに、いちいち脳梗塞を疑って、病院に行ってはいられない。ストロークは突然やってくる、と考えたほうが良いように思う。

 激しく痛いとか、異常な嘔吐があったりすれば、誰でも病気を疑うが、脳梗塞は微妙な異変しかないので、発症するまで判らないことが多い。突然、片手足など動きが麻痺したり、ろれつが回らなくなって、慌てるのだ。前回のストロークがまさにそうだった。

脳がやられると、根性では対処できない

 頑張ろうとする意識自体がやられてしまうので、身体はまったく戦闘能力を喪失してしまう。だから一度、脳梗塞を経験すると、身体の微妙な変化に、異常なまでに神経質になる。
 右手のむくみは、目立ったものではない。他人はほとんど気がつかない程度である。しかし、見てもらえば、むくんでいるのが、他人でもはっきりと判る。運動機能には障害はない。 箸もつかえれば、パソコンも操作できる。もちろんマウスだって、意のままである。

 昼過ぎには、むくみが少なくなっていった。気にはなりながら、医者には行かずにほっておいた。その晩、いつものように血圧を測った。上が130台、下が70台と、安定していた血圧が、14日の晩には146-76となった。ちょっと高い。