幸いなことに重大な麻痺も残らず、軽い脳梗塞でした。でも、自分では気が付かないおかしなところがあるかもしれません。当時57歳の匠雅音が、ベッドの上で過ごした11日間の記録と、その後日談です。
 脳梗塞という言葉はよく聞きますが、たいていの人は「まさか自分が・・」と思っているのではないでしょうか。ボクももちろんそうでした。だから初期症状が出ても脳梗塞とはまったく気が付きませんでした。
 脳梗塞に襲われたときに「あっ、これはやばそう」と疑えるように、出来るだけ細かく当時を思い出してみました。脳梗塞の治療は、ある意味時間との勝負になります。人により症状は異なるでしょうが、イザというときのために脳梗塞の初期症状がどんなものか知っておいても、決して損はないと思います。

2006年8月13日(日)

−第5日目− やっとシャワーの許可

 病院の土曜日・日曜日は、いつもとちょっと様子が違う。診療といったことが少なくなり、見舞いに訪れる人がふえる。しかし、患者の病状は、カレンダーとは関係ない。ボクには点滴が追加された。

やっとシャワーの許可がでる

 この病院は、細かい規則も柔軟に運用してくれて、とても患者思いである。1つしかない浴室(シャワー兼用)は、月・水・金の午前中が男性、午後が女性の使用であり、火・木・土の午前中が女性、午後が男性の使用である。1人の入浴時間は30分で、男女交替で使うようになっている。
 予約が入っていなければ、ナース・ステーションの許可をえて、自由に使うことができる。日曜日や夜間は、看護婦さんが少なくなり、病人の入浴を管理できないので、使用できないのだが、それでも事情が許せば、使用許可がでる。
 ボクは軽症だったので、監視不要と思ったのか、日曜日にもかかわらずシャワーの許可がでた。完全空調の病室にいるとはいえ、5日ぶりのシャワーだった。すっきりしたこと、このうえなかった。

 お昼前に、薬剤師の男性が、服用している薬の説明にきた。これまた親切な対応で、この病院の職員教育には、ほんとうに感心する。

 点滴として液体で服用しているもの(入院当初から)
1.5%ブドウ糖液
2.アミノフリード
3.ノボ・ヘパリン
4.ビタメジン静注用
5.ラジカット注
6.生食注2ポート
7.低分子デキストランL

 錠剤で服用しているもの(昨日から)
1.パリエット錠10mg
2.メバロチン錠10mg
3.ワーファリン錠1mg(今日からプレタール100mgにかわる)

 これだけの薬を、懇切丁寧に、しかもわかりやすく説明してくれた。この頃には、差し入れられた脳梗塞の参考書を読んだので、だいぶ様子がわかってきていた。そのため、薬剤師の説明もつじつまがあって、S医師の処置にも、再度の信頼を確認できた。ヘパリンにしても、ラジカットにしても、基本的な薬である。 ウロキナーゼが使われていないのも好感をもった。

 脳梗塞には、ラクナ脳梗塞、アテローム脳梗塞、心原性脳塞栓とある。それぞれに対処の仕方は違うのだが、経過がすすんでこないと、確定的な処置は出来なのだろう。そのために、とりあえずは血を固まりにくくし、血栓ができるのを押さえるワーファリンが、服用されたに違いない。
 後日、友人の脳外科医にセカンド・オピニオンを求めたところ、適切な処置だとの返事があった。
 ワーファリンは血液をサラサラにするが、一度出血すると血が止まらなくなると言う副作用も強いらしく、長期間の服用には厳重な監視が必要らしい。ワーファリンは心原性脳塞栓に使われることが多い。こうした説明も、薬剤師が丁寧に教えてくれた。

 午後3時過ぎから、頭痛が始まる。頭の頂点が、ズキンズキンと痛い。しかし、1時間くらいで、痛みは消えた。
 昼から普通食になったが、テーブルはまだベッドの上だ。6時の夕食を食べると、後はもうすることはない。

本を読みながら、消灯へとゆっくりと時間が流れていった