第3章 シングルズの住宅事情
1.シングルズの居住状況 その1
「親族世帯の非親族世帯員」の大幅な減少にともなって、単身者の住宅事情も大きな変化を見せている。
「単身者の戦後の住まいを簡単に振り返ってみると、@戦後の中小零細企業従業員を中心とする間借り、住み込み、A高度経済成長下での集団就職者や地方から上京した学生を受け入れた寮、下宿、B設備共用の木賃アパート、C設備専用の鉄賃アパート、ワンルームマンション、というような変遷をたどっている」 *1
シングルズにたいする全国的な住宅調査は未だなされてない。
しかし首都圏では、単身生活者が多いこともあって、シングルズにたいする関心はひときわ高く、いくつかの調査が実施されている。
それらを使いながら、シングルズの住宅事情が、どのような状態にあるのかを見ていこう。
東京都に限ってみると、地域的には都心部と、都心周辺部におけるシングルズの増加が目だっている。
「…単身世帯の全世帯数に占める割合を地域別にみると、千代田、中央、港の都心区では約40%、中野、杉並、豊島などの周辺の区では50%近い高い割合になっている。これに対し、葛飾、江戸川、足立といった東部の区では、20%台と低い割合になっている」*2
しかも、前章で述べてきたシングルズの高齢化が顕著にみられることを、東京都住宅自書1992年版でも認めている。
「年齢階層別にみると、25才までの若年層では、近年(80〜90年)減少しているものの、35才以上については、いずれも大幅な増加を示している」 *3
シングルズの住宅状況は、東京都においては、東京都住宅自書1992年版では、
「…1988年現在、持ち家14.1%にたいして、借家85.9%と圧倒的に借家住まいが多い。…借家のなかでも民間借家が全体の77%を占めており、<中略>…単身者の住宅といえば民間借家に代表されることになる」*4
といっている。
シングルズの住まいは、若年層が多いため、民間借家が多いだろうことは予測できる。しかし、住宅金融公庫が1990年におこなった「単身者の住宅意識調査」によると、東京都住宅自書よりは民間借家の比率が低く、シングルズの57.4%が借家住まいである。また、
「…年齢が高くなるとともに民間借家の割合が減少し、…45〜49才では持ち家の割が41.9%…」*5
ともいっている。
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住宅金融公庫「単身者の住宅意識調査」(PlO)より |
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しかし、55才以上の世帯主を対象とした「高齢者の住まいに関する調査」 *6 によると、借家27.3%にたいして、持ち家は71.0%となっている。
49才から55才の間に、持ち家率が 41.9%から 71.0%へと突然増加すると考えるのは不自然である。
そのため複数世帯人にくらべると、シングルズはやはり民間借家暮らしが多いと、結論づけぎるを得ない。
周知のごとく、戦後の民間借家は狭く、設備も共用のものが多い。
これだけからもシングルズは劣悪な住宅環境にあることがうかがえるのである。
シングルズの現在住んでいる間取りは、全体の平均では
「…1LDK・2DKがもっともおおく、2DK以下の合計は 74.3%となつている」*7
が、民間借家に限ってみると、ワンルーム、1K・1DKの合計が 57.7%に達している。
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住宅金融公庫「単身者の住宅意識調査」(P13)より |
劣悪な住宅に住んでいるシングルズの住まいに対する不満は強く、
「…『住宅が狭い』、『収納場所が少ない』、『住宅が古い』の順となっており、…<中略>…民間借家では『住居費が高い』が目だっている。」 *8
といった声が開かれる。
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